臨床の学び舎おんせいげんご BLOG

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9/17 ことのわ会でした(^^)/

ことのわ会では、引き続き「ルリア 言語と意識」を読み進めています。
 
第Ⅴ講では、語の意味場の構造=語の背後には多様な結合系(音声的、状況的、概念的等)が存在していることや、語結合のなかでの選択機能の生理学的基礎となっているのが「強さの法則」であることを学んできました。

 
 第Ⅵ講では、心理過程の調整の手段としての言語行為の機能が述べられています。
まず、知覚を組織化する語の役割について、色の知覚に対する言語行為の作用についてのサピア―ウォルフの仮説(言語的相対論)とそれに対する批判が紹介されています。
 アメリカの言語学者E.サピアB.L.ウォルフは、「色の名称を示す語の体系が色の知覚過程や色の識別・分類能力を大きく条件づけている」という仮説を提起しました。
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 色の名称(呼称)が色の分類過程に影響することは明白と考えられますが、レネバーグ、ロバート等の研究者は、語と知覚の関係は、サピア―ウォルフの仮説よりもはるかに複雑で、多くのものによって媒介されていると根拠を示して批判したとのことです。
 
 次に、意志的行為(本能的ではない、計画を立てて行う行為)の組織化における言語行為の役割について触れられています。
 ある心理学者たちは、意志的行為は何らかの精神力を基礎にした意志力の結果であると考え、別の立場の心理学者たちは、すべての行動を条件反射あるいは習慣に帰し、機械的に説明しようとしました。パブロフの条件反射理論を高次の心理諸過程にもあてはめ、意志的行為を複雑な条件反射とみなそうとしたのです。

 しかし、意志的行為を科学的に分析し、説明することを目指したヴィゴツキーの基本的立場=意志的諸過程は、子どもの具体的活動の発達の中で、子どもと大人との交際の中で形成されると考えることが必要不可欠である、と、その立場の確認が、科学的心理学の発達に多大の貢献をしたと述べられ、以降にその内容が説明されます。
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 言語発達において、言語獲得の最初の段階では、たとえば母親が子どもに「〇〇をとって」「〇〇はどこ?」と話しかけることによって、全体的な背景から命名された対象を抽出し、子どもの運動行為を組織します。この場合は、随意的行為は二人の人間の間で行われます。
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 発達の次の段階で、子どもは自分でことばを話すようになり、自分自身に言語命令を与えます(「□□ちゃん、〇〇をとって」など)。次の段階で子どもは自分の外言(はじめは、行為に随伴する形で、次には行為に先がけて発話)を利用しはじめ、その後に、外言が内面化され、内言(音声化しないことば)となります。
 
 この内言が行動の調整機能を担い、言語行為に媒介された随意的行為が発生すると考えるのです。(この過程は、ガリンペンらによって研究されました)このことによって、語には認識的機能と伝達手段としての機能とならんで、調整機能が存在することが明らかにされました。
 
 上述のように、言語行為の調整機能の発達の第一段階は、大人の言語教示に従うことですが、その能力がどのように形成されるかが、次に述べられています。
 J.ブルーナーによると、生まれたばかりの年齢期でも、母親の言語行為が子どもの定位反射をひきおこす(例:母親が子どもに何か話しはじめると、子どもの吸乳運動がすぐに止まる)が、これらの事実は、言語の調整機能の前史にあたるものと考えられます。
 子どもはおおよそ生後1歳2か月ごろ、「マリをチョーダイ」「オテテをアゲテ」等の大人の命令を聴くと、その応答として言われた対象に視線を向けたり、その対象に手を伸ばすようになります(特異性のある定位反射で反応)。

 しかし、この時期には、複雑な条件(指示するものを別のものより遠くに置いたり、目立たない色にしておく)の場合には、自分にとって強い定位反射をひきおこすものに反応してしまいます。また、同じ教示(例:棒に輪をはめて!)が繰り返された後に異なる教示(例:棒から輪をとって!)を与えても、先行の行為が惰性として残ります。
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 このような「困難」は、1歳半ごろまでの子どもに観察されますが、徐々に消失し、2歳半ころになると、この種の教示を正しく実行することができます。しかし、2~2歳半の子どもは、課題が視覚的な経験で強化されている場合には十分実行できますが、大人の「純粋な」言語教示には服従することができません。2歳の終わりになってはじめて、「純粋な」言語教示に服従でき、はじめは教示直後しか実行できませんが、のちに実行を遅らせることもできるようになります。
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 さらなる実験で、言語教示の内容と視覚的経験の内容を異なったものにする(例:「私がグーを出したときは、君はパーを出しなさい」)課題では、3才ごろまでの子どもは、求められている反応を正しく実行できず、直接的な模倣運動に変えてしまいますが、3才~3才6ヶ月になると、正確に実行されます。
 
 このことは、直接的な印象の作用が克服され、言語教示の作用が強くなると捉えられますが、この時期はちょうど運動の言語調整機能の大脳の装置である前頭葉の構造が成熟する年齢にあたるとのことです。
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今回はここまでで、次回以降に、大人の言語教示に従う能力の発達の続きから読んでいきます。言語が行為の調整を行う機序について、前頭葉の機能やヴィゴツキーの「外言」と「内言」についての理解も深めながら理解を深めていけたらと思います。