臨床の学び舎おんせいげんご BLOG

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10/15 ことのわ会 

今回は、発話の内的意図と第一次意味登録、内言から展開した言語発話の形成について読みました。

 

発話の出発となる最初の内的意図には、必ず「テーマ」「レーマ」という2つの構成成分が含まれます。

 

「テーマ」:発話の対象となり主体にすでに知られていること

「レーマ」:対象について述べること(発話の述部構造をなす”新しいもの”)


例えば…

ワーニャはペーチャに、夕方、彼がマーシャを温かく心から歓待することを約束した。

 

>「テーマ」:(発話の基本的対象)がワーニャ
>「レーマ」:ワーニャがペーチャに、ワーニャがマーシャを温かく心から歓待することを約束したこと

 

 発話の基本的な「内的意図」が、次に展開した言語発話の過程に変換される「意味登録」については、最初は圧縮された言語発話の特徴を持ち、後に、それが経時的に展開され、一定の順序で組織された言語発話へ変換されると説明されます。その過程で、「内言」段階というが想定されています。



 内言は、子どもが何らかの知的課題を解決しなければならないときに、先に発達した外言の中から発生します。つまり、相手に向けられていた言語行為が、後の段階で自分に向けられます。はじめは断片的な外言の形をとりますが、後に自分のための言語行為となり、形態的には圧縮した、不完全な特徴を持ちます。

 機能的な特徴としては、述語的に形成されており、その構成成分として、例えば「買う」という語があるとすれば、その後の結合価として「何を買う」「誰から買う」が保持されています。このような、内言にある諸要素の潜在的結合こそ、展開した言語発話の基礎として役立っていると考えられます。

 

>言語学「項構造」


 脳損傷の場合には、内言は障害を受け、内言に含まれる語と結びついている潜在的な語彙的機能が破壊されます。この場合、内的意図は統辞的に組織され展開した言語発話に移行することができず、力動性失語症の状態となります。

 

 


 次に、思想が展開した言語発話に変換される行程について、述べられています。
 一定の順序でつくられているまとまった発話の産出は、孤立した一つの文の形成とは異なり非常に複雑な特徴をもっています。コミュニケーションに用いられる言語は、複雑な、時間に沿って展開される過程であることが、フンボルトによって指摘されました。
他の研究者たちはさらに、展開した言語発話に含まれる文は、一定の文脈の中で与えられること、その文脈は話し手の内的意図だけでなく、聴き手の発話に対する態度にも対応していなければならないことを指摘しています。


したがって、展開した発話に含まれている文は、対象指示機能をもっているだけでなく、具体的なコミュニケーションの中でつくり出され、そのコミュニケーション過程を基礎にしてはじめて理解することができる社会・文脈的意義をもっているのです。


それゆえ、言語学的分析は、発話の形成過程を分析しただけでは不十分で、コミュニケーションの状況、話し手の意図、伝達される情報の内容、その情報に対する聴き手の態度、等を考慮に入れたより広い心理学的分析の部分的な環でなければならないとされます。


発話の過程では、「テーマ」も「レーマ」も、それに応じた情報を伝える構えも、長時間保持しておくことが必要です。それらができない場合、展開した言語発話は、相互にまとまりのない個々の発話の断片に代わっていきます。言語発話の産出の本質的な特殊性は、十分大きな実行記憶容量を持っていることと、複雑なストラテジー(方略)の体系を持っていることです。この体系を用いることにより、発話の本質的な内的意味を抽り出したり、副次的な連想を制止したり、課せられた課題に応じた言語的表現を選択することが可能になります。

 

仮定されていることとして、言語発話の産出では、発話される文の成分の進行がたえず制御されている(コントロール)こと、さらに、多様な選択肢の中から必要な言語成分を意識的に選び出す選択が必要であることです。
これらによって、言語発話は意味的な統一性を保つことができるのです。

 

つづく。

 

 

6/26 おと・ひと・ことばMeeting@KUAS

参考:
『音楽と脳科学:音楽の脳内過程の理解をめざして』 2016/4/21
S. ケルシュ (著), Stefan Koelsch (著), 佐藤 正之 (監修, 翻訳)


情動と音楽、音楽と社会性あたりについて

音楽を通じて、それにまつわる社会的情報をも私たちは感受する傾向がある。
ただこの傾向は音楽に限ったものだろうか。例えばワインにこだわる方は、ワインそのものの用途に関すること(味や香り)以外にも産地や歴史などについても知りたがる。他にも例が挙げられそうだが、ヒトは自分に取って好ましい対象については、その周辺情報も集めたがる傾向がある。冒頭の1行は音楽にまつわるヒトの行動ではあるが、それは音楽に限ったことではないだろう。音楽の特質とは言い難いが、音楽もヒトとそのような関わりを持つ類のひとつであろう。

音楽には「期待値」みたいなものがある。
予定調和(その音を続き(メロディー)はこうなることが多いよね〜)内での和音進行とそうでない場合に自律神経の反応が異なった。交感神経皮膚反応、EEG、心拍数などで計測。
ヒトは「その音楽の進み方」について何か期待している。意識的か無意識的かこのメロディーの先はこうあってほしいと求めている傾向がある。ポップスではこの聴衆の期待を裏切ったり、合わせたりすることで感情の緊張と緩和を織りなすようにすると聞いたことがある(突然、サビから始まるとか、典型的にイントロからAメロ…など)。音楽の構成を工夫することは商業的な成果(売れるか売れないか)が背景にある。しかし、ヒトがメロディーに対して期待する(緊張と緩和を得る)という本能?がその背景のからくりにあるのだろう。
メロディー・・・よくよく思えばこれはただ音が連続しているだけである。人はそれに期待して、かつ緊張したり、落ち着いたりする。何とも不思議な関係である。

上記の2点から、ヒトは自分にとって興味深いことに対して、その周辺となるような社会的な情報も求め、またそれによって心が癒されたり、興奮したりする。
一方でそれは広く見渡してみると、音楽に限ったことではない。例えば着る服の色によって交感神経の興奮がことなるとのこと。五感に分けて考えてみても、視覚的な絵画やモッフモフの生地に触覚経由で癒されたり、味や香りは当然のこと、ヒトを緊張と緩和させることは容易に想像がつく。また部屋の家具の雰囲気など複合的な感覚を刺激する環境設定なども同様だろう。

では、その類のなかで「音楽」はどのような特徴があるのだろうか。
音楽はその「共有」が簡便で即効性があり、短時間であり、また聞いている人も自分の発声を用いるなどして模倣のような形でそれに同調、参加できることが挙げられるのではないか。ある意味では心を刺激するツールをポータブルに持ち歩ける、これは他の刺激物とは一線を画すように思う。

いつのまにかその人の基準(文化)を形成することもある。
例えば「好きな絵」には個人的な傾向がある。音楽もしかり、その人の基準、いうなれば「個々人の文化」を容易に形成する。それが手軽に簡便に行える。「音楽」の利便性のわりに、ヒトの心への深度の深さを感じさせる。

また、メロディーやリズムを記憶できる。
音感のある人が「音階」として音楽を記憶する(脳内に記述する)のは、例えば、「「青森県」は「北海道」の「下」にある」というように地形における位置という本来、なんの境界もない事象について「青森県」、「北海道」「下」というような語(記号化)を冠して脳内に記述することと似る。つまりそれを記憶する教育がそれを可能にしている。
がしかし、そのような教育を経験していなくとも、音楽(少なくともメロディーとリズムくらい、正誤問わず)を記憶できる。鼻歌や歌唱など(自分の発音器)で記憶していることを示すこともできる。記号化して記憶していないにもかかわらず、再生できる。
※個人的にはここはかなり深い部分かと思っています。一体、何を記憶しているのか。そしてそれがなぜできるのか。

この曲は8分なのか16分なのか。
最後に最近の曲の話題となった。上記したように音楽はその人に文化を形成するので、個々人の文化間の比較において、異なった文化(世代)の難易度を異なった文化(世代)が同様に感じることは難しい。ましてや音楽としての正誤などはさらに難しい(そこには商業的な視点も往々に存在する。例えば今の若い世代が自ら好んで昔とは異なる音楽を聴いているとは限らない。)
ある曲が16分に聞こえるとのこと。それに対してそうでもないようなともいう。また音感のない私にはどっちもべつに…(^_^;)という状態。個人的にはむかしの雅楽や能にもリズムがあり、それは今のようなものとは異なり、容易に(意識的に)感じれるものではないがリズムがあるとのこと。それと比べていわゆる楽曲はある意味、分かりやすくリズムを刻む(8分か16分かは置いておいても。途中でリズムが変わっても意識されない範囲ではない)。
リズムは心拍の安定をその由来としていると考えるのがスタンダードだと思う。メロディーと同様にリズムにも「期待値」がある。リズムについても少し知識が欲しいなぁと思った。そんなことを考えながら、8分vs16分論争を聞いていました。

以上。

 

2025年3月29日 ことのわ会記 

今回は、前回読み切れなかった「発話の内的意図」からです。
すべての言語発話の出発点は「動機」であると、前回学びましたが、動機そのものはまだ一定の内容をもっておらず、その内容を決める「内的意図の発生」という段階が想定されています。

発話の主体が、主観的な意味をどのようにしたら誰にもわかる語の意義の体系に変換できるのかを考え始める段階とも言えます。

 


ここで、「思想(ムイスリ)」という用語が登場します。

「思想(ムイスリ)」と言語発話の関係については、(心理学の分野では)思想がすでに出来上がった形成物で、それが言語形式に具体化されるという誤った仮定から出発しました。
はっきりしない思想が、明瞭な、しかも展開した言語的コミュニケーションの連鎖に変換されていく過程は、思考行為そのものとその過程の観察行為とを分割することが困難なために、記述することが困難でしたが、ヴィゴツキーは、「思想は言語行為に具体化されるのではなく、言語行為の中で完成される」ことを定式化したと述べられています。

彼は、主観的な、また語では定式化されないで主体だけに理解されている思想から、語で定式化された、任意の聴き手にも理解され、言語発話に定式化される言語の意義の体系へ移っていくこと(個人的意味から意義への移行)こそ、言語発話の形成の中心的問題としています。

 

次回、この続きの第一次意味登録、内言について読み進めます。

 

滋賀おんせいげんご 4/4 開催しました(^^)

1名、新規の参加者がおりました(^^) 。。。何年ぶりですかね(^^;)

 

 まずはご協力いただいた音源を拝聴。両側の声帯に著しい運動障害をお持ちとのことでした。WavesurferにてPitch contour(音声の高さを表示する画面)にて拝見しましたところ…、Pitch(声の高さ)がある程度の上下を持っております。試しに参加者さんに同様の音声を録音して比較。…むしろ、症例さんのほうが上下してました…(^^;) 

その後、「え~」発声などでPitchの上限を発声してくださった音源を拝見しましたが、ご年齢(高齢)にしていはむしろ良い高音ともいえるような…。ファルセットで良いような…。

とりあえず、声帯でのPitchの上下はある程度の範囲(年齢相応?)で産出できてそうなので、発声練習を続けて維持され、また冒険的に歌唱なんかもよいのはなかろうか?と(もちろん、本人のメンタルにも配慮が必要ですね。大病後の高齢者に失敗経験させるは忍びないので(^^;))。

 

 こういう臨床症例について参加者みんなで議論するのは大変勉強になります。ご協力頂ける方がおられましたらお持ちいただいて、皆で音声を聞いて、見て、語って、なにかその人に良い糸口を探す。。。良い学びの機会になると思います。(そして、提案された方はステッカー、ゲットでした)

 

あとは古田のほうから、論文紹介。

Acoustic and language-specific sources for phonemic abstraction from speech | Nature Communications

Large-scale single-neuron speech sound encoding across the depth of human cortex | Nature

 

あと、記事も紹介しております。

New brain-computer interface allows man with ALS to ‘speak’ again

 

 またほかの参加者さんから、小児分野の「聴覚的記銘力」と音声表出の関係について話題提起がありました。上記の論文にも関わることですが、ここはどっちが先かということも含めて慎重な議論が必要なところかとも思いながら、う~ん、今後も課題ですね。

 

 また小児の症例提示がありまして、/k/の声門破裂音、鼻音化についてですね。/k/の鼻音化について、症例の音声と同じ波形になるように参加者数名がTryしてみたのですが、症例のほうがより閉鎖が明確というのが興味深い感じでした。うまく言えないですが、無声破裂音[k]の素質を持った軟口蓋鼻音…? 声門破裂音からの過渡期だからできる軟口蓋音でしょうか。う~ん、うまく言えないですが勉強になりました。これは時間オーバーで次回ということで。

 

また次回は6月頃を予定しております。

ご興味あられる方は気楽にご参加ください。

 

古田

 

 

 

音楽についてのMeetingのHPを作成しました。

以前から行っている音楽療法関係のMeetingのHPを作成しました。

まず、Meetingの名前をみんなで考えまして・・・「おと、ひと、ことば」としました!メンバー全員、とっても気に入ってます。

以下をクリックでどうぞ。

Music therapy meeting  おと ひと ことば

 

興味のある方は気楽にメンバーまでお声掛けください。

音とヒトとことばについて、なかなか興味深いMeetingです。

 

古田