臨床の学び舎おんせいげんご BLOG

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3/26 ことのわ会でした(^^♪

 3月は、「言語と意識」の第Ⅳ講「概念の発達とその研究法」の途中までを読みました。


 前回、語の「意義」とは、語の背後にかくれている安定した一般化の体系であり、それに対して「意味」とは意義の客観的な結合体系から抽り出された語の個人的な意義(ある時、ある状況に関連している)であると学びました。

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2/5のことのわ会のブログより引用。




 今回は、語の背後にある結合系について知る(評価する)方法と、その際にみられる反応についての解釈、語のカテゴリーの抽出がどのような経過を経て可能になるのか、それが可能になる年齢等が示されました。

 

提示された方法は、以下のとおりです。

 

・概念定義法:語の意義を定義するよう求める

 

質問の例)「犬」とはどんなものか 「机」はどんなものか たずねる
  ↓
応答の例:

①その語の意義の定義は行わず、対象の何らかの一つの特徴・機能を再生する、もしくは対象を具体的状況に入れる

 「犬ーそれは家を守ります」

 「犬ー吠えます」

 「机の上で食事をします」・・・など。
       

②対象を一定の概念の体系に入れ、一定のカテゴリーに関係づける

 「犬ーそれは動物です」

 「机ーそれは家具です」)

 

*就学前児は①の応答が支配的→低学年学童児は①とともに②も観察されるが、具体的状況を再生する応答が多い→高学年学童は②が優勢になる
  
・比較法と差異識別法:二つの語を提示し、それらに何が共通なのかを言うよう求める。


①被検者に、一つのカテゴリーに含まれる2つの語を提示する

>「犬とネコでは何が共通していますか。自転車とオートバイでは?」:容易な課題


②共通しているものを探し出すことがより困難で、外見上相互に異なっている2つの対象について共通しているものを問う

>「カラスと魚、鉛筆とタイプライター」:具体的な特性を捨象し、一つの共通するカテゴリーに入れるために一定の努力が必要。


③類似点よりも相違点がはるかに強く表現され、具体的な状況で関係づけられる2つの対象が提示される。

>「騎手」と「馬」の共通点は?:騎手が馬にのっていること=実物・行為的状況の再生 を捨象して「騎手」も「馬」もともに生物だということは困難。


*一定の抽象したカテゴリーに入れる=情報の言語・論理的処理。就学前児、低学年学童児は、実物・行為的操作が絶対的に優勢←逆説的事実として、就学前児、低学年学童児共通しているものを抽り出すかわりに相違点を指摘する(犬には鋭い歯があるが、ネコには鋭いつめがある) 

  • 対象の識別操作の背後には、実物・行為的思考がある。
  • 共通しているものの指摘の背後には、一定のカテゴリーに関係づける操作がある。
  • 差異の識別→一般化=共通している特性の抽出 が発達する。

 

・分類法:4つの対象の中から、一つの共通している概念でまとめられるものを集め、そのカテゴリーに入らないものを捨てるよう求める。


①余分な四番目:被検者に4つの対象を示し、その中から一つの共通概念でまとめられるものを集め、そのカテゴリーに入らないものを捨てる。

例:ノコギリ、オノ、シャベル、マキ が提示される - 最初の3つは「道具」、最後は「材料」-カテゴリー的思考による。


*この変種として、同じカテゴリーではないが外観(形、大きさ、色)が似ているもものを提示し、具体的な印象、実物・行為的状況を克服して、抽象的なカテゴリー特性を抽り出す操作を要求する。
*就学前児、低学年学童児は、知覚的な特性や具体的状況への関連性にもとづいて関係づける反応が優勢。高学年になると、カテゴリー的な原理にもとづく分類が優勢になる。
 
②自由分類法:絵にかかれたさまざまな対象を、一つの語で名付けられ概念づけられる一定のグループに分ける。

>外的な、知覚的な特性にもとづいて分ける/共通している状況(例えば、食事)で分ける/カテゴリーで分ける=言語・論理的操作(共通しているカテゴリーに入れる)。


*カテゴリー的分類は、概念の階層をベースに行われる。ヴィゴツキーによれば、概念の階層は概念の緯度=概念の抽象度の程度 と、経度=概念の適用点 を持っている。

 

 紹介された方法は、発達の各段階で語の背後にいかなる形式がかくれ、語の意義の定義がどのような心理操作によってなされるか、また知的発達の諸水準や、実物・行為的な一般化の形式から抽象的な一般化の形式へ移行する能力の諸水準を見つけ出すためのよい診断法であると述べられています。


 実際に、臨床現場でSTが担当する知能検査に同様の課題がありますが、その応答の内容を詳細に吟味して、対象者の語の概念について検討するところまで至っていないのが現状ではないかと思われます。

 

 語の概念についてのこのような段階的な構造を整理して理解することは、言語発達や認知機能低下の状況を評価する際に大変有用であるでしょう。ヴィゴツキーによる概念の「緯度」「経度」については、まだまだ十分な理解に至っておらず、今後の課題ですが、少しずつ読み進めて理解を深めていきたいと考えています。