臨床の学び舎おんせいげんご BLOG

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音感覚と運動。

コントラバスウッドベース)っていう楽器があります。詳しくは以下のHPを。

コントラバスとウッドベースは同じ楽器? 意外と知らない歴史や特徴、有名曲 | Music Lesson Lab

 

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Wood bass

 で、「だいたい180cmから200cmと大人の身長を超え、胴回りも50cmから60cmと充分な厚みがあります。」とのこと。そして、その真ん中にある黒い板、指を当てて弾くところね、だいたい幅平均10cmくらいかな、で長さ1mくらいあるんだろうけど、そこにドがなるところ、レがなるところ、そういう音階が鳴る場所があるわけ。すごいのは、それぞれの音階がなるところに目安となる目印があるわけじゃないってこと。

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Christian macbrideーEast of the sun

 だから、この楽器を演奏する人は、正確な音階になっていることを耳で覚えて、その運指(指の位置やはこび)を再現する。たぶん、この弦を押さえて弾くって運動はきっと誰にでもすぐにできると思うけど、この楽器をちゃんと演奏するには、どこが「ド」でどこが「レ」とか正確に感じてその運動を正確に再現できなければならない。音階だけじゃなく、例えばグルーブ感とかね、そういう「音感覚」が必要。ただただ弦を押さえて弾くっていう「運動」だけならほとんど誰にでもすぐにできる。

 

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楽器の演奏からヒトの音感覚(聴覚)と運動の連結のすごさを感じる。

(こういう音間隔を必要とする楽器はウッドベースに限らず、バイオリンもそうだし、トロンボーンなんかもそうです。ピアノは一音ずつ鍵盤でギターとかも音階については目安が作られているけど、演奏に際しては音階以上に音のつながりのグルーヴ感や流麗さなど、弾き方(運動)に音感覚を必要とすると思う。)

 

 こういう話をすると私はそんな楽器なんて弾けへんし、限られたヒトの特殊な能力でしょ?と言いたくなる人もいる。私も楽器は好きですが、大して上手に弾けないので、そういう人の気持ちはとってもわかる。でも、私にはおしゃべり(調音、構音)と、このウッドベースの音階の音感覚と運指の連動が一緒に思えてしまう。おしゃべりができることは、このウッドベース奏者のように音感覚と運動を統合した「演奏」であり、とっても多くの方がその「演奏」を可能としていると思える。

 舌や口唇などの器官、声帯も含めて調音を担う諸器官にはそれぞれに縦横無尽な運動能力(あるいは咀嚼嚥下など他の目的のための運動能力)が備わっているけれど、ただただ動けばいいのではなく、日本語の音声という音感覚(認識、音韻知識)がなければ「演奏」にはならない。口蓋もウッドベースの指板と同じで目印はない。でも、その人の中で「た」はここ、「ちゃ」はすこし後ろ、「か」はここらへんとなっている。声帯の柔軟な伸長や緊張の程度も同じようになんの目安もないけれど、これくらいでアクセントになるでしょう、これくらいで疑問文となるでしょうとサラッとできる(している)。

 

 運動が音感覚に整えられて刷り込まれていくって感じなのかな。運動がうまく音感覚の支配下に落ち着けば再現性高く織りなすことができるのかな(もといヒトの動きってそういうものな気がする。)

 可動域制限や筋力低下などで運動が制限された時、その再調整に対象の筋?の運動トレーニングだけではちょっと片手不足な気がする。それに、運動制限がどうにも不可逆的だとしても、その既成の音感覚の範囲にうまく取り合ってもらえる機会をなんども反復すれば、新しい運動と音感覚の関係が再構築されるのでは?と思う。

 

今回、登場いただいたBassistはクリスチャン・マクブライトさん。とても上手で有名な方なのですが、以下のような気楽な演奏もされるのが良いですね(^^)

 

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