臨床の学び舎おんせいげんご BLOG

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「は」を「た」や「か」に聞き間違えるか、聴覚実験を予定!!

,(古田)

「は」を「た」や「か」に聞き間違えるという誤聴について、古田と西岡氏が長い間、Twitter-siteにて議論を重ねてきました。発端は「補聴器適合検査の指針(2010)で用いる67-S語表の単音節「は」が音圧を上げると「た」、さらに上げると「か」に変わって聞こえるという現象がある」という提案でした。

 

私は、この議論はSTさんがよく評価?として用いる「聴覚的印象」の落とし穴を指摘していると思っています。「聞いていることが、聞いているものとは限らない」、「出来事は自分の知識の範囲で起こっていると思い込む傲慢」、感覚なのか認識なのかは難しい線引きですが、私たちにはそういう性質があると思います。

とりあえず、次回のおんせいげんご(光華:11月14日(土)、滋賀:11月20日(金))にて、この議論について解説しながら、改めて「誤聴」を体感して頂ける演目を準備しようと思います。

 

 

以下、Twitter-siteでの議論の終盤を並べております。以前の議論の内容はこのBlogの記事を遡っていただくと見つかると思います。それらを踏まえて、楽しんで頂けたらと思います。

 

 

(2020年10月7日~)

古田:補聴器適合検査の指針(2010)で用いる67-S語表の単音節「は」が音圧を上げると「た」、さらに上げると「か」に変わって聞こえるという現象について、「おんせいげんご(次回11月14日土曜:詳細はHP参照。)」で仮説の聴取実験をしたいと思います。

 

古田:ひとつの仮説:単音節の「た」「か」には帯気音化した/h/の部分がある。子音部分が短い「は」の発音は、その音圧を上げると、「た」「か」の/h/部分と誤認しやすくなり、結果的に「は」が「た」「か」に聞こえるのでは?

 

古田:つぎの仮説:「た」、「か」それぞれの破裂部分の周波数帯域は、調音位置と共鳴の関係で異なる範囲を持つ。しかし、その音圧を上げると、蝸牛の周波数配置に重複する部分が生じる可能性がある。結果的に、それが「た」「か」の音韻認識の境界を不明瞭にさせるのでは?

 

古田:先週、自分のとこでやってみました。私(男性)と後輩(女性)で子音短めの/ha/を発音して、録音して、音圧を上げてみた。・・・しかし、「た」も「か」も聞こえない。単に大きい「は」にしか聞こえない。でも、それをちょっといじったら面白い現象が確認されました。

 

古田:面白い現象① 普通の/ha/の音量を変えても「た」「か」は聞こえてきませんでしたが、その/ha/の子音部分を短く切り詰めた音声を作って聞いてみたら、なんとなく「た」と「ぱ」らしいのが聞こえてきました。

 

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古田:面白い現象② 子音を短く発音した/ha/の音量を変えても「た」「か」は聞こえてきませんでしたが、その/ha/の子音部分を短く切り詰めた音声を作って聞いてみたら、なんとなく「か」と「ふぁ」らしいのが聞こえてきました。

 

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西岡:ものすごく核心に迫っている感じがしますね。純音とクリック音の例でよく取り上げられますが、音を極端に短くすると周波数知覚が難しくなる現象が関わっていそうですね。CD音源の音圧上昇が人工的な子音の時間短縮を生み出した理由が分かれば答えになりそうな気が。

 

古田:議論が濁るかもしれないけど、図に示したような調整を普通の/ha/に行い、先述のように子音部分を短くして「た」を探してみた。最も「た」を感じたのは普通の/ha/。次に子音部分を増幅した/ha/でした。

 

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古田:現段階において、呼気の強さや程度で日本語の「は」「た」「か」は知覚できるかもしれない。つまり、調音位置を示す特徴(破裂成分)がなくとも、呼気の在り方でまるで調音位置を認識してしまうってこと?ローカス理論(次述)の「呼気版」のような感じかな。

 

古田:ローカス理論については上智大の荒井先生のHPへ。調音位置で行われる破裂成分がなくても、後続する母音の開始周波数の変化だけで、/b,d,g/のなど子音部分を私たちは知覚できる・・・(http://splab.net/APD/K300/index-j.html

(~2020年10月17日)

 

では、次回の勉強会で経験してみましょう(^^)/

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(古田)