臨床の学び舎おんせいげんご BLOG

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1/3オクターブバンドって?

あるきっかけで、1/3オクターブバンドなるものを調べてみましたが・・・残念ながらカオスでしたので、Twitterで議論を繰り返している聴覚系STの西岡氏にご教授いただこうと思いまして。

最初はTwitterでいつも通りに意見交換をしようと思ったのですが、ちょっと説明が長くなることが多いような気がしたのと、Blog-siteのコメントを使って議論してみるのも面白いのではないかと思いまして。

 

というわけで、1/3オクターブバンドに行く前に、マスキングにて見出された聴覚の機構について、『言語聴覚士の為の音響学』(今泉敏著、医歯薬出版)のp103~104を以下に要約してみました(以下の緑の文字と図)。

 

 

周波数2kHzの純音に対して、2kHzを中心とする周波数帯域に限定された帯域雑音(図中のマスキー帯域幅)を同時に呈示して、周波数2kHzの純音に対する最少可聴値(聞こえ始め)を測定する実験を行った。

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そのマスカー帯域雑音の幅を広げていくと、純音の最少可聴値(聞こえづらさ、図中の信号音閾値)が上昇するという現象がおきた。そして、ある範囲を超えると閾値の上昇が止まった。つまり、帯域幅がある程度の幅以上は聴こえづらさの変化が一定値(頭打ち)になるようだ。

 

この実験でわかるのは、マスカーの帯域幅がマスキング(聞こえづらさ)に影響しているということ。

そして、マスカーの幅がある程度の幅になると、閾値の上昇(マスキング、聞こえづらさの程度)が変わらなくなるということは、対象の純音(今回は2kHz)を聞こえづらくするのは、その純音を中心とする特定の帯域幅の雑音成分だけであるといえる。

 

ちなみに、この実験に用いた帯域雑音はその1Hzごとの物理パワーが等しくなるように調整してあるとのこと。このことを含めて換言すると、帯域雑音の物理パワーのうち、特定の帯域に含まれるパワーのみがマスキングに寄与し、この帯域の外側にある雑音成分はマスキングに寄与しないといえる。

 

この現象の発見者のFletcherさんがこの帯域幅のことを、臨界帯域幅(Critical band)と命名した。

 

この臨界帯域幅は対象とする純音の周波数が高いほど、その幅が広くなる。100~500Hzの範囲で臨界帯域幅は約100Hzで、1kHzで約160Hz、10kHzで約5kHzとなる。

聴覚(聞こえ)には、一本一本の神経線維がそれぞれに反応している上に、この臨界帯域幅の帯域通過フィルタの集合があると考えられるのではないかと。

 

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臨界帯域幅は500Hzで約100Hz、1000Hzで約160Hz、1kHz以上では約1/4~1/3オクターブ幅になる。それを対数表示すると1kHz以上で直線的に増大するように示すことができる。
その際の通過帯域の下限の周波数f1と上限の周波数f2の比が2の時、オクターブバンドと表現し、中心周波数は(f1f2)の1/2乗となる。1/3オクターブバンドはそのオクターブバンドの1/3の幅のことである。

 

 

で、この「1/3オクターブバンド」って、どういうものなのかという質問です。