臨床の学び舎おんせいげんご BLOG

『臨床の学び舎おんせいげんご』の各部門の予定や今までの勉強会の内容などがチェックできます。

10/13 音響勉強会 at 京都先端大(古田研究室)でした。

議論となったのは、小児の音声でした。

議論の結果的にはすこし前舌音に個性が指摘できまして、いわゆる「促音化(側面摩擦音、あるいは破擦音)」では?という話題でした。

参加者にて対象児と同じSpectrogramとなるように促音化を練習しました(笑)が、意外と難しいものですよ。へんな言い方ですが、対象児のほうがよっぽど上手でした。普通に正中で摩擦音作った方が楽なのになぁなと意見が出てましたよ。

 

他、メンバーの方から成人の高次脳機能障害の症例報告の話題を紹介していただきました。とっても特徴的な症状の方で…、何度かご紹介頂いている報告内容なんですが、論点が難しいというか、某モデルではすぐに限界が来るというか…。

 

あと、研究用に超音波断層法の簡易な装置を配備致しまして、それで少し参加者の舌を見てみました。下顎や舌の個性などがあり、明確な像を結ぶためにはプローブの当て方が難しいですね。練習していきます。

 

今、研究室ではさっと音響波形が出せるようにとか、音声について議論しやすい環境つくりを行っておりますが…マイクがね、中途半端なコンデンサーマイクをつかっているんだけども・・・重いなぁ。また買い換えて楽しみやすいようにしてみたいと思います。

 

また自由な議論を楽しみにしております。

 

古田

京都おんせいげんご 次回:2023年11月11日(土)

次回:2023年11月11日(土)
時間: 14:00~16:00


場所:京都先端科学大学 東館2階 古田の研究室
参加:事前登録などは不要です。自由にご参加ください。
参加費:500円程度

〈演目1) 募集中
〈演目2〉rtMRIDB(リアルタイムMRI調音運動データベース)の見方(古田)

 

場所がわからない方、初参加の方などは古田までご連絡下さい。

 

京都 | onsei-gengo (jimdosite.com)

滋賀おんせいげんご:2023年10月を予定

次回:2023年10月を予定
※日程決まり次第、告知いたします。
新型コロナウイルス対策を徹底した上で開催いたします。

 

場所:G-NETしが 男女共同参画センター
時間: 18:30(開場) 19:00~20:45
参加:事前参加登録は不要。当日参加歓迎。
参加費:多少。

 

<演目>
【症例検討】

 未定

【文献紹介】
 rtMRIDB(リアルタイムMRI調音運動データベース)の見方(古田)

 

※症例検討を希望される方は音声データの持ち込みをお願いいたします。
※個人情報の扱いについては各自で十分ご配慮をお願いします。

 

滋賀 | onsei-gengo (jimdosite.com)

音声音響勉強会:次回は10月13日(金)

定期開催:毎月第2金曜 

次回は10月13日(金)です。


時間:18:00~21:00
会場:京都先端科学大学 東館2階 古田の研究室

ご参加を予定される方はお気軽にどうぞ。
特に初めて参加される方は古田まで連絡をお願いします。

 

Workshop | onsei-gengo (jimdosite.com)

 

5月27日 ことのわ会 「文の統辞的構造と意味論的構造」

前回は、行動の調整あるいはプランニングの役割を果たす内言の構造について学びました。


今回は、第Ⅷ講「文の統辞的構造と意味論的構造」を読み進めます。

まず、言語の(伝達の)基本単位は語ではなく文であることが述べられます。
語はまとまった判断、思想を表していないのに対して、文はどんな単純なものでも一定の思想を表現し、経験を伝達すると説明されます。

 

 

子どもの言語発達の始点となる個々の語の発話は、行為の状況に編み込まれているが、事実上、一語文で、例えば「人形」という語の発話は「人形をちょうだい」「人形がほしい」等を表しています。

次に、語から文への移行は何によって規定されているのか?が論じられます。

ここではまず、補語を要求する動詞の存在(「愛する」という語は補語として「誰を」を要求、「買う」という語は「何を」「誰のところで」を要求)が紹介されます。そして、幼児の一語文が語の連鎖に変換される過程には、発達の段階ですでに現れていた行為における結合「要求(身振り)―名前」「名前―実際の行為」が、言語行為に移行したものであると述べられます。そして、このような言語の組織化は、表示された対象を一定のカテゴリーに入れる「パラディグマ的組織化」(概念を産み出す)とはまったく異なる「シンタグマ的」な組織化(発話を産み出す)であるされます。(パラディグマ的組織化は、音韻・語彙にみられる)

 

 

発話(文)の組織化の基礎は、「一つの語から他の語への流暢な移行」(連結した発話)です。語で文を構成することによって陳述を形づくり、思想もしくは経験を定式化する、これは継時的なシンタグマ的組織化の原理に従っており、パラディグマ的原理とシンタグマ的原理が、言語の組織化の基礎的原理であると捉えられています。


ルリアらは、1928年、発達のいろいろな段階にある子どもの話し言葉で、個々の語の間にどのような結合が形成されるかを実験しました。

子どもに個々の語(例:「太陽」「窓」「犬」)を与え、最初に頭に浮かんだ語を答えるよう頼み、語の結合の特徴と潜時を考慮して資料を分析しました。そこで明らかになったのは、語に対する応答として子どもに生じた結合は2つの大きなグループ(「連合的」結合と「述語的」結合)に区別されることでした。

連合的結合とは、「犬ーネコ」「太陽ー月」等、述語的結合とは「犬ー吠える」「子どもー泣く」等です。
5~7歳の子どもでは、述語的反応が優勢で、連合的反応は非常にまれであり、より年齢が高くなってはじめて連合的応答が現れ、思春期の子どもや成人では連合的応答が明らかに優勢になります。

このように、言語行為のシンタグマ的組織化の単位である述語的応答は、年齢的にはるかに早い時期に子どもの言語行為に現れ、文の原型をなすと考えられます。さらに、述語的応答の潜時は、連合的応答よりはるかに短いことも分かりました。第一次的なもの、時期的に早く形成されるものは述語的応答で、それは連合的応答より潜時が短い、述語的応答は言語活動のより初期の形式に対応し、子どもの実際的な生活に密接に結びついていると述べられています。

ここから、文の構造(シンタグマ的結合の形成)をどのように説明するかという問題に入っていきます。ここでは、発話は第一次的な思想、もしくは内的意図から出発し、のちに文を形づくる語の体系に変換されていくのではないか、との問題設定がされています。

N.チョムスキーは文の基本的図式をなしている統辞的構造を抽り出せることを示し、法則的な文法構造を「表層統辞構造」と呼びました。各言語において、表層統辞構造はそれぞれ特殊であり、その数が非常に多いこと、各構造はさまざまな方法で表現できる(一つの文はかなり高い自由度で他の文に言い換えられる)こと、また、一つの同じ文が異なった意味を持つ(二義的)場合があることが、文の特徴として挙げられています。
チョムスキーの仮説では、無数の「表層統辞構造」の背後に、思想表現の一般図式を反映している「深層統辞構造」が存在し、子どもはこの「深層統辞構造」を修得し、実際に話す時の形式である「表層文法構造」を抽り出すことができるとしており、子どもが短い期間に多様で可変的な文法構造を獲得する事実を説明しました。

 

チョムスキーは、この深層統辞構造の獲得は、子どもに生得的な言語構造が存在しているためと説明しましたが、ルリアは、「言語は、子どもが対象に対する能動的行為を基礎に形成され、それらの行為が言語の最も単純な核構造の「主体ー述語ー対象」の関係に展開された実際的な基礎を作り出す」としています。

 


その後に述べられている「表層」文法構造と「深層」文法構造との相互関係の説明はここでは割愛して、最後に触れられている文の意味論的分析について、紹介します。

文には「(文脈)自由型の文」「(文脈)依存型の文」の2つの基本的タイプが存在するという考えや、研究者によっては、文脈から自由な文は一般的に存在しないという考えもあります。


各文では、基本的な対象、何を問題としているのかを表す「テーマ」、その対象について何を言おうとしているのか、その文に含まれている判断の基本的内容を表した「レーマ」を捕り出すことができることが分析により明らかになりましたが、ある研究者は、さらに文のトピックを記述し、文の焦点を抽り出すことを好んでいます。


言語の意味論的記述は、文の意味を確認し、トピックスを保証し、焦点を抽り出し、テーマとレーマを区別するのを助けると説明され、これらの手段として、語、語や句を抽り出す助けとなるアクセント、個々の要素や句間に生じる休止、文全体の意味を変える変化が挙げられています。その他に、予測(presupposition = 潜在的な選択の構え)も挙げられています。

 

文:関

絵:古田

2/18 ことのわ会でした(^^)/

今回は、第Ⅶ講「内言とその大脳における組織化」についてレポートします。


 ここでは、まず、子どもが大人の言語教示に従えるようになった後に、子どもが自分自身の言語行為で行動を調整しはじめる・・・そのために、子どもの言葉ははじめは外に展開された「外言」の形をとり、次に、徐々に短縮し、内言へと変化するという課程が紹介され、その後に内言の形成と構造について述べられています。

 

下図:子どもが大人の言語教示に従えるようになった状態

 

下図:子どもが自分自身の言語行為で行動を調整しはじめる。

 内言の役割を分析する最初の契機となったヴィゴツキーの観察では、課題を行っている最中に困難な状況にぶつかった子ども(3~5歳)が、まわりの人々に向けられたのではない発話を行い、生じた状況について話し、課題をどう解決すべきかを自分に問う場面がみられました。

  これらの言語行為について、J.ピアジェは「自己中心的言語」と記述し、コミュニケーション機能を持たない、自分のための言語行為と捉えました。これらの言語行為は、子どもが大きくなるとだんだん省略され、つぶやき声に変わります。その次の段階では、外的な音声言語はまったく消失し、わずかに残るのは口唇の省略された運動だけで、言語行為は内に「入り込み」、「内面化」し、年齢が上がると外見上は全く消失してしまいます。ピアジェは、子どもの自己中心的言語を、子どもの自閉性、自己中心性の反響とみなし、自己中心的言語が消失することは、子どもの行動の社会化によってもたらされると考えました。


 一方で、ヴィゴツキーは、内言の解釈においてピアジェとまったく反対で、子どもは誕生したときから社会的存在であるとみなし、子どもははじめ、大人に対して社会的な言語行為で話しかけ、大人に助けを求めるが、次に、大人の助けを得ずに一人で言語行為の助けを借りて状況を分析しはじめると考えました。そして、知性化され、行動を調整する機能をもつ言語行為に至り、そのことにより、複雑な意志的行為が発生するとしています。


 次に、内言の構造について、行動の調整機能あるいはプランニングの役割を果たす内言は、外言とは異なった圧縮した構造を持っていると述べられています。外言から内言への移行については、外に声を出す音声言語からつぶやきに、そして次に内言に変わっていくこと、展開された言語行為から断片的で圧縮した言語行為へ変わり、省略したものになっていき、内言は外言とはまったく異なった構造を持っていると仮定されています。


 さらに、内言にとって特徴的な特性は「述語的」であることが述べられています。コミュニケーションのテーマはすでに内言に含まれているので、対象を表示することはなく(「主語」を含まない)、まさに実行すべきこと、行為が向けられるべき方向を示すという特性です。そして、内言は外的な陳述へと展開されることができることにも触れられています。


 この講の最後には、言語行為の調整機能の大脳における組織化についての記載があります。

 言語行為の音韻構造の正確な知覚に関与する左側頭領域、音韻構造の正確な実現に関与する左後中心ゾーン、複雑な論理・文法的構文の理解に関わる側頭・頭頂・後頭ゾーン等が紹介された後に、言語行為の調整機能の基礎にある大脳メカニズムは左の皮質前頭領域であることが示されます。

 この領域は、運動皮質部にとって一般的に特徴的な垂直的構図で形成されており、時間的に経過する遠心性の運動行為の組織化を保証すると考えられています。大脳前頭部は2つの大きなグループに分かれ、その一つ(前運動領域)は、個々の運動を一つの運動メロディーに統合することを保証しており、前運動野下部に損傷をもつ患者は、展開された外言が途切れて流暢性を欠き、その障害は発話の流暢性を保証する内言の障害をもたらすとしています。もう一つは前前頭葉部で、この部分の構造で優勢なのは第Ⅱ・第Ⅲ層の皮質(連結神経層)であり、この部分の損傷では患者の運動や外言は保持されるが、意図的な言語的活動の内的力動性の障害を引き起こすことが紹介されています。また、行動においても、随意的に組織・プログラム化される複雑な行為が障害されることが観察され、前頭葉は言語行為の調節機能の保証やそのことによる意志的行為の組織化にとって決定的な意義があると、述べられています。

 

 失語症の症状(流暢性の障害)と内言との関係については、損傷部位との関連を含めて、今後改めて考慮したいと思います。

 

文責:関

イラスト:古田

12/3 心理学系勉強会「ことのわ会」でした。

 前回に引き続き、ルリヤの『言語と意識』の第Ⅵ講の「大人の言語教示による子供の行為の調節機能は漸次的に発達する」との内容を、読み進めました。


 大人の言語命令に対する子どもの運動反応(バルブを押す)をみる実験において、

  • 2歳の子どもは、「押して!押して!押して!」という言語教示に対して運動を開始するが、教示がなくても押してしまう。
  • 2歳の子どもは「ランプがついたら押しなさい。ランプがつかなかったら押してはいけません」との教示に対して、教示を覚えることが困難。
  • 2歳半の子どもは教示を反復できるが実際に実行することは困難。
  • 3歳の終わりごろになって指示に従って運動できるが、始まった運動は停止の教示があっても続いてしまう。

 

・・・という内容が紹介されています。


 このことについては、教示の一つの環(註1)によってひきこされた過程が惰性をもち、教示の次の(制止の)環をこわしてしまうとの説明がなされています。

 さらに次の段階の実験では、子ども自身の言語(行為)が自分の運動反応を調整できるかをみています。

 

 一つの信号(例えば赤い信号)に対して「よし」と言い、バルブを押す。他の信号(例えば緑の信号)に対して「よくない」と言い、バルブを押さない という課題を与えます。
 

 この実験では、年齢の低い段階では「信号に対する応答(言語反応)自体の誤りが多い」「言語反応では正しく応答しても、運動反応に誤りがみられる」という現象が観察されますが、3歳ごろになって初めて、言語の意味的側面に対応して運動を調整しはじめるとの結果が得られたとのことです。

 

 この研究は、精神薄弱児(註2)や脳衰弱症(←身体的な病気や中毒の結果として、発達に遅滞が生じると本文で説明されています)の子どもに対しても行われ・・・

 

  • 重度の知的遅滞がある精神薄弱児は言語教示を覚えることができても、信号の色に関係なくどんな信号でもバルブを押してしまう、
  • 脳衰弱症の子どもはすべての信号にバルブを押すグループと、「押さない」反応が一旦出ると「押す」反応が制止されてしまうグループに分かれる。

 

・・・との結果が紹介されています。

 これらの反応から、精神薄弱児の場合は言語系の病的惰性が言語行為の調整機能の破壊をもたらしているのに対して、脳衰弱症の子どもは、言語系が運動系より可動的で、調整的役割を保持していると捉えられています。

 

 これらの説明において、対象となった実験の対象となった子どもの言語発達(言語理解)の関与について、もう少し考慮されるべきではないかとメンバーから意見が出ていました。言語が行動(運動)を調整するという機能について、その点が明らかでなければ、判定は困難ではないかと。


 また、言語による行動調整については、認知症の方においても観察すべきポイントであると考えられます。次の第Ⅶ講「内言とその大脳における組織化」も少し読みましたが、内容は次回と合わせてレポートしたいと思います。

 

 

 註1:これは、ルリアの神経心理学のテキストにはよく登場するのですが、「ネットワーク」というほどの意味と考えていただけたらと思います。

 註2:文中の精神薄弱児などの語は書籍(原著1979年刊)の記載そのままを採用していますが、現代では知的障害」と同義と思われます。以下に『日本大百科全書(ニッポニカ)』の「精神薄弱」より引用しております。
「知能を中心とした精神発達が幼少時期から遅れていて、社会的な適応が困難な状態を示すものの総称。この呼称は精神の欠陥を示すという、差別感を生む語感の悪さから、日本でも1970年(昭和45)ごろから「精神遅滞」という名称が、学問的にも対策の実際面でも使われるようになった。さらに90年代に入ってからは、厚生省(現厚生労働省)はその心身障害研究の「精神薄弱にかわる用語に関する研究会」で、法令上は「知的発達障害」intelectual developmental disorderまたはこれを略して「知的障害」という用語を用いることを提案、99年(平成11)から精神薄弱という表現は知的障害と改められた。」