臨床の学び舎おんせいげんご BLOG

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2/18 ことのわ会でした(^^)/

今回は、第Ⅶ講「内言とその大脳における組織化」についてレポートします。


 ここでは、まず、子どもが大人の言語教示に従えるようになった後に、子どもが自分自身の言語行為で行動を調整しはじめる・・・そのために、子どもの言葉ははじめは外に展開された「外言」の形をとり、次に、徐々に短縮し、内言へと変化するという課程が紹介され、その後に内言の形成と構造について述べられています。

 

下図:子どもが大人の言語教示に従えるようになった状態

 

下図:子どもが自分自身の言語行為で行動を調整しはじめる。

 内言の役割を分析する最初の契機となったヴィゴツキーの観察では、課題を行っている最中に困難な状況にぶつかった子ども(3~5歳)が、まわりの人々に向けられたのではない発話を行い、生じた状況について話し、課題をどう解決すべきかを自分に問う場面がみられました。

  これらの言語行為について、J.ピアジェは「自己中心的言語」と記述し、コミュニケーション機能を持たない、自分のための言語行為と捉えました。これらの言語行為は、子どもが大きくなるとだんだん省略され、つぶやき声に変わります。その次の段階では、外的な音声言語はまったく消失し、わずかに残るのは口唇の省略された運動だけで、言語行為は内に「入り込み」、「内面化」し、年齢が上がると外見上は全く消失してしまいます。ピアジェは、子どもの自己中心的言語を、子どもの自閉性、自己中心性の反響とみなし、自己中心的言語が消失することは、子どもの行動の社会化によってもたらされると考えました。


 一方で、ヴィゴツキーは、内言の解釈においてピアジェとまったく反対で、子どもは誕生したときから社会的存在であるとみなし、子どもははじめ、大人に対して社会的な言語行為で話しかけ、大人に助けを求めるが、次に、大人の助けを得ずに一人で言語行為の助けを借りて状況を分析しはじめると考えました。そして、知性化され、行動を調整する機能をもつ言語行為に至り、そのことにより、複雑な意志的行為が発生するとしています。


 次に、内言の構造について、行動の調整機能あるいはプランニングの役割を果たす内言は、外言とは異なった圧縮した構造を持っていると述べられています。外言から内言への移行については、外に声を出す音声言語からつぶやきに、そして次に内言に変わっていくこと、展開された言語行為から断片的で圧縮した言語行為へ変わり、省略したものになっていき、内言は外言とはまったく異なった構造を持っていると仮定されています。


 さらに、内言にとって特徴的な特性は「述語的」であることが述べられています。コミュニケーションのテーマはすでに内言に含まれているので、対象を表示することはなく(「主語」を含まない)、まさに実行すべきこと、行為が向けられるべき方向を示すという特性です。そして、内言は外的な陳述へと展開されることができることにも触れられています。


 この講の最後には、言語行為の調整機能の大脳における組織化についての記載があります。

 言語行為の音韻構造の正確な知覚に関与する左側頭領域、音韻構造の正確な実現に関与する左後中心ゾーン、複雑な論理・文法的構文の理解に関わる側頭・頭頂・後頭ゾーン等が紹介された後に、言語行為の調整機能の基礎にある大脳メカニズムは左の皮質前頭領域であることが示されます。

 この領域は、運動皮質部にとって一般的に特徴的な垂直的構図で形成されており、時間的に経過する遠心性の運動行為の組織化を保証すると考えられています。大脳前頭部は2つの大きなグループに分かれ、その一つ(前運動領域)は、個々の運動を一つの運動メロディーに統合することを保証しており、前運動野下部に損傷をもつ患者は、展開された外言が途切れて流暢性を欠き、その障害は発話の流暢性を保証する内言の障害をもたらすとしています。もう一つは前前頭葉部で、この部分の構造で優勢なのは第Ⅱ・第Ⅲ層の皮質(連結神経層)であり、この部分の損傷では患者の運動や外言は保持されるが、意図的な言語的活動の内的力動性の障害を引き起こすことが紹介されています。また、行動においても、随意的に組織・プログラム化される複雑な行為が障害されることが観察され、前頭葉は言語行為の調節機能の保証やそのことによる意志的行為の組織化にとって決定的な意義があると、述べられています。

 

 失語症の症状(流暢性の障害)と内言との関係については、損傷部位との関連を含めて、今後改めて考慮したいと思います。

 

文責:関

イラスト:古田