臨床の学び舎おんせいげんご BLOG

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日本語には4大文法家と言われる人たちがいる。

 言語障害を考える時に、時々、話題になる「文法」。STさんの業界って不思議と「学校文法」と呼ばれる文法を第一に持ち出すことが多い。いわゆる小学校か、中学校の時に習うアレね。だから、STさんたちってアレが日本語の文法だと思っている人が多い。確かに、アレも日本語の文法についてなんだけども、あれは日本語文法研究の一つの派閥に過ぎないんです。

 以下に、古典ですが、日本語の4大文法家というのをWikipediaからの引用を示します。ちなみに上記の学校文法というのは橋本進吉氏の考え方。私は山田文法を思考の基盤として学んでみたいとかねてから思っていますが、手が伸びず…。(興味の持てる方、ぜひ、「おんせいげんご」でPresentationをお願います。)

 

【以下、Wikipedia現代日本語文法」(2020年11月)より】

 現代日本語文法(げんだいにほんごぶんぽう)は、現代(狭義には近代と区別して戦後)の、母語話者によって使われている日本語の文法である。

 文語文法に対してと同様、いわゆる四大文法と呼ばれる、山田文法、松下文法、橋本文法、時枝文法の4つが、現代日本語文法において重要な位置を占めてきた。

 四大文法のうち松下文法を除くものは、国学の流れの中での日本語研究を受け継いでいるが、統語論と意味論の区別は明確でなく、助詞や助動詞の用法についての研究が大部分を占める。

 これに対し松下文法は独自の視点から言語一般の理論を志向している。時枝文法は渡辺実北原保雄、鈴木重幸によって根本的な批判・修正を受けつつも継承されている。

 他方、アメリ構造主義言語学の方法論による現代日本語文法として、バーナード・ブロックやサミュエル・マーティンなどの研究が挙げられる。ブロックの文法は言語学的な整合性の高いものであり、アメリカ軍の言語教育プログラムであるASTPにも応用されている(ブロック自身、このプログラムの日本語教育に携わっている)。

 文科省の国語教育の文法は橋本文法をベースとする学校文法である。外国人向けの日本語教育にはなじまないとされており、現状では後述の「にっぽんご」などが参考にされている。

 ヨーロッパの言語学、特にソビエト・ロシア言語学(ヴィクトル・ヴィノグラードフら)の影響を受け、言語を対立と統一からなる体系として捉えることを重視した奥田靖雄や、その指導・影響下にある鈴木重幸、鈴木康之、高橋太郎、工藤真由美ら言語学研究会の研究がある。述語の活用について本居春庭より連なる伝統を批判し、活用形についての重要な考察を多く提示した。中でもロシア語の研究を踏まえたアスペクト研究については、金田一春彦の研究をついで大きく発展させた。言語学研究会は、民間教育研究団体である教育科学研究会国語部会(教科研国語部会)に対して指導的立場にあり、言語教育のテキスト(副読本)「にっぽんご」シリーズ(むぎ書房)の編集を指導したため、その文法論は「教科研文法」と呼ばれることもある。「にっぽんご」シリーズは中国・韓国・ロシアなどでも日本語に関する重要文献とされており、日本語教育においても参考にされている。

 生成文法の枠組みにおいては、統語論と意味論の区別が明確にされ、様々な現象が掘り起こされた。最も早い研究としては井上和子の研究があり、その後奥津敬一郎、黒田成幸、久野暲、柴谷方良、原田信一、神尾昭雄などにより重要な研究がなされた。格、態、スコープの研究は生成文法の方法論によって促進され、現在に至っている。

 

Wikipedia「山田文法」(2020年11月)より】

 山田文法(やまだぶんぽう)は、山田孝雄による日本語の文法である。

 言語の内容である思想に重点を置いて体系を立てようとする、心理主義的な内容主義に基づく論理主義的な立場を貫く理論主義的な本質主義を基とする文法理論であり、その骨子は「文の成立の契機とはどのようなものか」と言うことができ、そこから「意味と職能の上から判断して決定すべきである」という論が生まれる。要するに「意味に基く文法論」として、山田文法は成り立つことになる。そこでは「統覚作用」が重要な役割を果たす。この統覚作用についてはドイツのヴントの影響が大きい。

 

・品詞分類

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山田文法


Wikipedia「松下文法」(2020年11月)より】

 松下文法(まつしたぶんぽう)は、松下大三郎による日本語の文法である。

 言語の普遍的性質についても考察し、一般理論を志向するものである。独特の用語法により近づきがたい部分もあるが、構造概念を洗練されたものに仕上げ、文を構成する要素のレベルの違いを厳密に捉えるものである。

 

・品詞分類

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松下文法

Wikipedia「橋本文法」(2020年11月)より】

 橋本文法(はしもとぶんぽう)は、橋本進吉による日本語の文法であり、日本語文法のいわゆる四大文法(山田文法・松下文法・橋本文法・時枝文法)のひとつ。学校文法のベースとして、戦後国語教育への影響が大きい。

 

・品詞分類

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橋本文法

Wikipedia「時枝文法」(2020年11月)より】

 時枝文法(ときえだぶんぽう)は、時枝誠記による日本語の文法である。

 ソシュールによる(と時枝に規定された)「言語構成観」に対立する「言語過程観」に立脚する理論であるため言語過程説とも呼ばれる。

 「言語構成観」とは、例えば文という統一体はその部分を集めただけのものとする言語観である。これに対し時枝の「言語過程観」はこのような考えを否定し、「文」という統一体はその構成要素である語を単に集めたものとは質的に異なるものである、とする。ここで語の寄せ集めとは質的に異なる「文」という統一体を成立させる契機となるのが主体による陳述である。

 ソシュール言語学における言語過程を循行(じゅんこう:あるものに従ってめぐり歩くこと。)の過程だと難じつつ(=悪く言う)、時枝が主張する「言語過程」とは、発話主体が、表現の素材となる客体世界の断片を、言語表現へと転換する主体的過程を指す。例えば「山」「桜」という単純語は素材となる客体世界から一回の過程で得られるものであるために単純語であるが、「山桜(やまざくら)」はそのようにして得られた単純語にさらにもう一回の過程を経て語としての統一体にしている、すなわち二回の過程で語としてる複合語である。また別の側面では、空気の振動やインクのしみという物理的なものを、それとは無関係な客体世界の断片に結びつける。「陳述」とは言語過程の中の、特に文成立の契機となる過程である。

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時枝文法

 ・・・いかがでしたでしょうか?それぞれの詳細はWikipedia、あるいはそれ相応の書籍で学ぶことができます。ただ、ここでお分かりいただけるのは、STさん業界がよく話題にする「文法」、つまり、橋本文法は4大文法家の中でも異例なほど表面的で形式的ですね。戦後教育、つまりは学びの結果に○×を付けることが求められる教育においては重宝したのでしょう。

 日本語を運用することに困っている方々とともに、その方の目線がより良き方向性を見通せるようにお手伝いする私たち。そんな私たちにとっては、どのような文法理論が役に立てるのでしょうか。橋本文法にも参考にできることはあると思いますが、もうすこし広い視点でも良いように思いますね。 

 

(古田)